ICT-BCP その2

地域防災計画には地震による被害想定があります。ICT-BCP策定の場合にもこれを活用します。ただし、この被害想定は人的被害(死者数、重傷者数)、住家被害(全壊・半壊棟数)が中心です。人的被害と住家被害から、生き埋め者救出、怪我人搬送、応急危険度判定、避難所開設・避難者受け入れ、死亡届の受付、罹災証明書発行などの仕事量が想定できます。被害想定の中には電力被害、通信被害に言及するものもありますが、視点はその自治体のエリア全体です。

 

ところが、ICT-BCP策定時に必要なのは特定箇所の想定です。各庁舎(支所含む)の揺れによる被害がどの程度か、庁舎内部にあるサーバ・PC等の情報機器の被害はどの程度か、各庁舎への電力、通信はいつ復旧するかです。細かいことを言えば、庁舎の中の、ある特定の部屋のサーバあるいはPCに電力、通信を供給できるかです。そして、万が一代替物品を輸送する必要があるなら、対象となる場所までの緊急輸送路等の通行可否、車両・運転手調達、あるいはヘリコプターによる輸送なども重要な要素になります。

 

地震が起きると、津波、火災、そして土砂崩れ、液状化が続く場合があります。揺れによる被害だけでなく、それに続く被害も念頭に想定を行うことが大事です。

 

庁舎の耐震性が無い場合、あるいは津波浸水域にある場合、地域防災計画に災害対策本部の代替設置場所が記載されています。そうなると情報システムを復旧する拠点も代替場所の想定が必要です。これは必ずしも災害対策本部と同じ場所になるとは限りません。なぜなら、情報システムを復旧する拠点には電源及び通信が不可欠だからです。電力や通信の復旧を待つだけでは能がありません。停電が長期に渡る場合も想定し、代替場所を想定しておくことが肝要です。

 

ある程度被害想定を具体的に描いてくると、いつどんなサービスを復旧するのかが目標として必要になってきます。ICT-BCPを策定するにはこれが不可欠です。住民基本台帳システム、課税台帳システム、国民健康保険システム、後期高齢者医療システムなどが優先度が高いサービスだと思われます。しかし、各自治体によって異なるかもしれません。これを全庁合意の下で決めるのがICT-BCPの最も重要な作業のひとつと言えるでしょう。これらのシステムを使用している部門(住民課や税務課など)に、発災後の仕事量と方法(場所含む)を確認し、想定されるシステム復旧工数と重要度を順位付けします。もちろん、より多くのシステムができるだけ早く使えることが望ましいですが、残念ながら復旧に投入できる人数、代替物品、時間には限りがあります。総合的な判断から、いつどんなサービスを優先して復旧するのかを目標に掲げます。

 

続く