Smart Fire Fighting報告書は3つの論から成り、「はじめに」、「本論」、そして「結論」です。「本論」の中の章立ては、以下のとおりです。
- 通信技術と伝送方法
- 個別防護装備としてのセンサー
- モバイルセンサー
- 固定型センサー
- データ収集
- ハードウェア/ソフトウェア
- リアルタイムデータ分析
- 消防データのアプリケーション – 緊急事態前と後 –
- 緊急事態対応中のデータ利用
- 消防士でない人向けのアプリケーション
- 伝送方法のユーザ・インタフェース
上記章立てから分かるように、どのような技術要素があるか漏れ無くまとめています。技術的に何があるか提示し、そこからアプリケーションへ話を展開します。この報告書は個別技術要素を選定するのが目的ではなく、大まかな研究開発ロードマップを示すのが目的なので、もう少し踏み込んで議論しても良いと感じるところもあります。しかし、頭の中をある程度整理するためには非常に分かりやすい報告書です。
そして、「はじめに」の中で、以下のとおり具体的な研究項目を例示し、報告書の中でどんな議論が展開されるか示唆します。
- 自動走行、衝突回避技術。なぜなら火災死者の10%は車火災に関連するものだからである。
- 移動ロボット。DARPAのロボットチャレンジは2014年が第1回、それは消火活動に焦点を絞ったものだった。ロボットに要求されたのは、スタンドパイプを特定し、消火ホースのかたまりを運搬し、スタンドパイプに取り付け、蛇口を開くという作業であった。
- 次世代防護服。心拍数・呼吸・皮膚温度を測定する。3軸加速度計。速度・距離・歩数・歩幅を計測するブーツ。そして、解析のため、無線でスマホにデータを送る。靴下のセンサーにより、歩数・速度・高さ・距離を測定し、ジャンプしたかどうかも記録する。
- 仮想現実ゴーグル。まるで見ているかのような情報がゴーグルに表示される。
- モバイルコンピューティング。何百万のスマホアプリとともに。
- GPSと連携する高度な地図情報。
- ビッグデータ。火災の予防や救急対応における新分野を代表するもので、分散されたセンサーからのリアルタイムデータとクラウド中にあるデータベースから構成される。
- マルチメディア・ソーシャルメディア・IoTの勃興。人口のほとんどが携帯電話を保有することにより膨大な情報が生み出されている。
- BACnetやASHRAEによるビルの自動化や制御ネットワークのためのデータ通信プロトコル。建物センサーのような個別アイテムの効率が上がる技術の統合を促進する。
- 火災警告システムを含むスマートホーム。建物の重要な機能である安全・安心・娯楽・エネルギー・周囲の環境を高度に制御する。
- Firstnet。全米ブロードバンドネットワークであり、警察・消防・救急サービスが7つの方法によって音声会話を可能とする。それらはプッシュ・ツー・トーク機能、グループコール(1対多)、ダイレクトモード(1対1あるいは近傍検索)、全二重音声(通常の電話と同じ)、発信者番号通知を含む。
これを見るだけでも、報告書において、Smart Fire Fightingとして想定しているものがどんなものかは掴めるかもしれません。現時点で、CPSとして取り上げられることが多いのが、製造プロセス・モビリティ・スマートハウス等であるので、消防という観点から見るひとつの例として参考になると思います。
次の回では、面白いと感じた論点を中心に紹介する予定です。