これまでの話を踏まえて、具体的なICT-BCPの章立てを考えてみましょう。
- ICT-BCPの基本的な考え方
- ICT部門の運用体制(平時、発災時)
- 被害状況の想定
- 対象システム及びサービス
- 検討項目とリスク評価
- ICT部門の訓練計画
1章では、目標を明示することが大切です。たとえば、発災後72時間以内、という目標を掲げることで、以後記述されていること全てが、この目標を達成するために検討されていることが分かります。ここが、「なるべく中断させず、中断してもできるだけ早急に」のような記述では、想定する範囲が広すぎて検討に曖昧さが残ります。
2章では、平時の運用体制と発災時の想定運用体制を提示します。同じ章に記載することで、その違いが明確になります。災害時判断を誰がどのように行うかまで提示されているのが望ましいです。図上訓練で時々見受けられますが、平時のように上司に判断を仰げる状況ではないにも関わらず、それを理由に何もアクションを起こさないことです。そのようなことを許容する体制ではマズイです。
3章では、地域防災計画の被害想定を踏まえながら、具体的な想定を掲示することが重要です。もし、職員初動マニュアルも存在するなら、それとの整合にも配慮します。この章が具体的であればあるほどICT-BCPの役に立つ度合いは高くなります。
4章では、ICT-BCPの対象とするシステム及びサービスを記載します。
5章では、検討項目毎のリスク評価を記載し、検討した対策も記します。この評価を行う際、目標が明確である必要があります。目標や被害想定が変更される場合、あるいは対象システムが追加される場合にも、この考え方を適用することができます。
6章では、訓練計画を提示します。特にライフライン(電力、通信、水、道路等)が途絶える場合、実際どのような動きを各システムがするのか確認する訓練が求められます。「実運用しているシステムで検証するな」というのはICTの基本的な考えです。しかし、災害時を想定すると、できるだけ本番に近い環境で訓練を行うことが大切です。庁舎電源の定期点検はそういう意味ではチャンスです。5章で検討したことが、想定通りにいくかどうか確認し、その結果から導かれることを再び5章に反映させるのです。
4回シリーズでICT-BCP策定ポイントについて記載しました。ICT-BCPは防災・減災に重要な役割を果たします。何らかの理由でICT-BCP策定が進んでいない自治体の中で、少しでも取り組み始めることを期待します。もちろん、このブログでの記載だけでは充分ではないので、お問い合わせから具体的な相談をいただければ対応したいと思います。
最後に、ICT-BCP策定時に参考になる2つの書籍を紹介します。ひとつが国土交通省がkindle版を無償公開した「東日本大震災の実体験に基づく 災害初動期指揮心得」です。日本語版と英語版があります。もうひとつが東日本大震災時に後方支援拠点となった遠野市が発行する「3.11東日本大震災 遠野市後方支援活動検証記録誌」です。ICT-BCPは、絶たれた補給路の再構築手順に他ならず、2つの書籍から学ぶことは多いはずです。
以上